生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:平成27年3月20日
 
 

学生の能力とキャリア形成 (がくせいののうりょくときゃりあけいせい)

competency and career formation about students
キーワード : 能力キャリア形成生きる力改革力イノベーティブな授業
宮崎冴子(みやざきさえこ)
1.能力の「達成度」に関する学生の意識
   
 
 
 
  【定義】
 「能力」とは何らかの活動(動作や作業)をすることができる力で、能力の程度は動作の複雑さ、問題の難しさ、作業結果の正確さ等によって規定され、訓練や発達段階における成就力に限定される。能力の価値基準は所属する社会の要請によって決まるので種文化間で異なる場合がある。「キャリア形成」とは将来の希望や目標に必要な情報を収集・探索して主体的に生き方を決定していくことで、「問題解決能力を持ち、主体的に学び考え、「生きる力」を備えることが根底にある。
【説明】
 「能力の達成度に対する意識」についてU大学(学生数約5,500人、国際学部・教育学部・工学部・農学部)共通教育科目「人間と社会」の受講生に、前期160人(平成18(2006)年6月1日)と後期は別の受講生225人(平成18(2006)年11月1日)に聞いた。質問は「宮崎の能力開発構造図」(添付資料)の9つの能力領域の能力モデル群の4項目ずつ、合計36項目について「充分達成されている(達成),3、まあまあ普通(普通),2、達成されていない(未達成),1」を記入してもらった。
 回答結果を帯グラフ(全体・性別・学部別)で示したところ、前期と後期に聞いた傾向が重複し、学生の傾向が判明した。
 前期・後期分を合わせた385人について、「未達成」の回答がもっとも多かったのは「資格取得」で、「改革力、応用力、率先力・指導力、専門的な知識・技術」がつづく。一方「達成」の回答は、「基本的生活習慣」が50%以上で「倫理観・道徳観、リズミカルな生活、読み書き計算の基礎知識」がつづく。
 学年比較では、どの因子も有意差はなかった。男女比較では「達成」は「学習・仕事への意欲・関心、協調性、順応性」が女性、「健康管理・運動能力」が男性の方が高かった。「未達成」では、男性の方が「資格取得、自己表現、率先力・指導力、リズミカルな生活、基本的生活習慣」について未達成と意識している。
 次に、各因子の合計点相互の相関係数を算出し、0.30以上で有意に高い項目同士を求めたところ、「達成」の回答では、「コミュニケーション能力」と「協調性、順応性、リーダーシップ」が高い相関を示した。「未達成」では「基礎・専門知識・技術、応用力、企画・開発、創造力」と「協調性、順応性、コミュニケーション能力」のいずれもが高い相関を示した。
【課題】
 今後の課題は、大学のカリキュラムや授業を改善して、学生の自己理解やキャリア形成・能力開発を4年間一貫で組織的・系統的に支援することである。具体的には、学生の多くが「未達成」と回答している「資格取得」に繋がる科目の開講も必要で、「改革力、応用力、率先力、指導力」のキャリア形成には、主体的能動的でイノベーティブな授業を開講する必要がある。
 一方で、学生たちはさまざまな学習機会を活用して自己啓発すべきである。卒業後も高等教育機関への社会人枠も大幅に広がる等、学習意欲さえあれば「いつでも・どこでも・だれでも」が学習する基盤が整備されているので、すぐに諦めて早期退職したり、無業者・フリーターのままでいるという生き方を選ぶのではなく、困ったら進路決定の支援システムを活用することが肝要である。ニートやフリーター、早期離職に関する問題もそのきざしは在学中にあるので、在学中に自分自身の能力を意識し、キャリア形成して自己変容していくことが問題解決に繋がる。 添付資料:添付資料:「宮崎の能力開発構造図」
 
 
 
  参考文献
・宮崎冴子『キャリア形成・能力開発-「生きる力」をはぐくむために-』  (株)文化書房博文社、2008年。
 
 
 
 
   



『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。
<トップページへ戻る
 
       
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved.