生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:平成18年1月27日
 
 

女性のエンパワーメント (じょせいのえんぱわーめんと)

women’s empowerment
キーワード : ジェンダー問題意思決定過程への参加エンパワーメント過程GEM
葛原生子(くずはらいくこ)
1.女性のエンパワーメントの概念
  
 
 
 
  【定義】
 女性のエンパワーメントは、ジェンダーのもとに意思決定過程から排除され、力を奪われ、無力化(disempowerment)されてきた女性たちが、ジェンダー問題に気づき、その批判的意識を行動に転換するために、力の基礎、すなわち意思決定過程への参加の機会を獲得することで、自ら力をつける(self-empowerment)道を開くこと、と定義できる。
【説明】
 エンパワーメントという概念は、野島佐由実によると、社会的に弱く、また脆弱性を有するものが、人間としての存在を確立し、持てる力を発揮できるように、社会や環境を変えていくという考え方として、1960年代から広く使われ始めたと言われている。発展途上国の開発、医療・介護、教育、ジェンダーおよび企業経営などの様々な分野で用いられており、近年ますます広範な領域で重要な概念になってきている。
 このような中で、「女性のエンパワーメント」という考え方は、ジェンダー問題(gender issues)、すなわち社会的・文化的につくられた性差、それに基づく性差別(sexism)の問題を前提としている。1960年代後半からの女性運動の展開における、「意識覚醒(consciousness-raising)」という初期のフェミニストの理論や活動の中心となる考え方にその萌芽を見ることができる。1980年代の途上国の開発における女性の問題に焦点づけた「開発と女性」、「ジェンダーと開発」の分野で議論が深められ、1995年の第4回世界女性会議(北京会議)でキーワードとして用いられたことにより広く一般に普及した。
 この「女性のエンパワーメント」という考え方が深められ、一般化していく過程で、女性のエンパワーメントとは、女性に慈善的に与えられる何かではなく、女性が自分たち自身で全てをなさなければならないプロセスとして理解されるようになった。力(power)という用語の再定義について多くの議論が交わされた。「誰かのうえに行使される権力」ではなく、「何かを行うことができるようにする力」として用いられるようになり、「外部から力を与えられる」ことから「自ら力を引き出す」ことへと力の再定義がなされた。また、ジェンダー問題に気づき、意識が変わった女性たちの批判的意識を行動に転換するために、生活に影響を与える全ての領域における「意思決定過程への参加」が焦点の一つとなった。そして、その結果として、家庭内外での自分自身の生活をコントロールする力関係を変えることが、女性のエンパワーメントの基本的ゴールとして確認された。
 
 
 
  参考文献
・久木田純・渡辺文夫編『現代のエスプリ:エンパワーメント』至文堂、1998
・野島佐由実「エンパワーメントに関する研究の動向と課題」看護研究Vol.26.No.6、1996年
・マギー・ハム著・木本貴美子、高橋準監訳『フェミニズム理論事典』明石書房、1999年
・Bunch, C., and Frost, S., Empowerment, International Encyclopedia of Women: Global Women’s Issues and Knowledge, Vol.1 pp.554-555, Routledge, 2000
 
 
 
 
  



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