生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:平成20年12月4日
 
 

中国における高齢者の学習 (ちゅうごくにおけるこうれいしゃのがくしゅう)

learning of older people in China
キーワード : 中国高齢者老年大学
神部純一(かんべじゅんいち)
1.高齢者教育政策
  
 
 
 
  【高齢者教育政策の背景】
 中国の高齢者教育が政策課題として議論されるようになるのは、1980年代に入ってからのことである。李筱平は、その背景として次の3点を指摘している。
 第一に、中国の高齢化が進み、それへの対応が国家の最重要課題となってきたことである。第二に、国際的な政策動向をうけつつ、国家の新たな課題として高齢者政策が進められるようになったことである。そして第三に、中国の教育政策の中に、生涯学習という視点が新たに位置づけられたことである。
【高齢者教育政策の展開】
 中国の高齢者教育政策は、1982年にウィーンでの国連高齢問題世界会議への参加をきっかけとして、翌年、高齢者対策を統括する専門機関である「中国老齢問題全国委員会」が設置されて以後、本格化することになる。この委員会は「老有所養、老有所医、老有所為、老有所学、老有所楽」を高齢者問題対策の基本方針とし、高齢者に対する扶養、医療とともに、高齢者の生きがいや学習の重要性を強調した。こうした動きを具体化する中で、中心的な役割を果たしたのが老年大学である。退職高齢者に生涯学習の場を提供するため、1983年に中国初の老年大学として山東省赤十字会老年人大学が設置されて以後、中国各地で老年大学が設置されるようになった。
 1990年代に入ると、高齢者教育政策の法的な整備が進められる。1994年、「国家計画委員会」、「国家教育委員会」、「老齢問題全国委員会」等、中央政府の10部門が連携して、「中国老齢工作七年発展要綱」を公表した。この要綱は、老年大学・老年学校の役割を高く評価し、「高齢者たちの“老有所学”、 “老有所為”、“老有所楽”のための重要な場所を、さらに強化、向上すべきである」ことを指摘した。
 その後、1995年に「中華人民共和国教育法」が公布された。この法律の中で、「国家は社会主義市場経済の発展及び社会の全面的進歩の必要に対応し、教育改革を推進し、各段階各種の教育の均衡のとれた発展を促進し、教育改革を促進し、生涯教育体系を整備、確立する(第11条)」こと、「国家は、学校及びその他の教育機関、社会組織が措置を講じ、公民に生涯教育を受ける条件を整備することを奨励する(第41条)」ことが規定され、高齢者が教育を受けることが、法律により保障されることになった。
 また、1996年には「中華人民共和国老人権益保障法」が公布され、その第31条で「高齢者は継続して教育を受ける権利を有する。国家は老年教育の発展に努め、各種の老年学校の設立を奨励しなければならない。各級人民政府は、老年教育の指導を強化し、計画的に行わなければならない」ことが規定された。
 2000年代に入って、高齢者教育政策はさらに強化されるようになり、2001年に公表された「中国高齢者事業発展の第10次五カ年計画要綱(2001-2005)」では、「老年教育を大きく発展させ、老年大学の受講者数を現在の2倍にする」ことを規定している。
 
 
 
  参考文献
・李 筱平「中国における高齢者教育政策−その展開と仕組み−」『東北大学大学院教育学研究科研究年報(Vol.49)』東北大学大学院教育学研究科、2001年、pp. 145-166
・謝保群『中日両国における高齢者生涯学習支援体制の現状と課題』 風間書房、2007年

 
 
 
 
  



『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。
<トップページへ戻る
 
       
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved.