生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:平成25年8月1日
 
 

地域政策と生涯学習政策 (ちいきせいさくとしょうがいがくしゅうせいさく)

キーワード : 地域政策公共政策自立した市民地域振興コミュニティへの寄与
横山幸司(よこやまこうじ)
1.地域政策と生涯学習政策
   
 
 
 
   地域政策とは、端的にいえば、「地域を対象とする公共政策」である。従来、公共政策の主体といえば、国や地方自治体といった政府であったが、今日、その主体は市民、NPO、民間企業なども含むべきと考えられている。そして、地域政策を市民が担うということの究極の姿は、市民自治である。換言すれば、地域自治・コミュニティ自治である。
 また、政策とは、公共的問題を解決するための処方ともいえる。そうであるならば、生涯学習政策が地域政策ないしは公共政策であるという以上、何らかの形で地域の問題解決に貢献していることが求められる。以上の点を踏まえて、地域政策としての生涯学習政策の意義について考えると以下の3点が考えられる。
 第一に、これからの公共政策は行政だけで担うことは不可能であり、それを担う自立した市民の育成に生涯学習が必要であるという点である。
 この意義には2つの意味がある。一つには、市民の価値観が、複雑かつ多様化している現代において、これまでのように行政の画一的な政策では、地域の公共問題の解決が困難となり、どうしてもコミュニティベースでの市民参画あるいは市民主体による地域政策の実施が必要不可欠になってきているという面である。
 二つには、市民が政策の決定に参画するために、生涯学習が必要不可欠であるという面である。
 地域政策の実施には、財政の支出が伴うが、財政難の現代においては、政策に優先度をつけることが不可避である。
 そうした政策の優先度は、最終的には議会が議決権という法的根拠に基づいて決定することであるが、幅広く市民がその決定に参画することによって、市民が納得のいく政策の決定、財政支出が行われる必要がある。そのためには市民は自治体の施策や行財政について学ばなければならないのである。
 第二に、新たな地域資源の発掘、それを活かした地域振興を支える市民の活動に生涯学習が必要であるという点である。
 地域資源を活かした地域振興は今も昔も地方自治体の重要な政策の一つであるが、特に平成の市町村合併後は、合併後の地域の連帯感を醸成する共通のアイデンティティの確立のため、定住人口や交流人口の増により、新たな歳入を確保するため、意図的に新たな地域資源を発掘して、まちづくりにつなげようという動きが活発化している。
 政策の導入は行政主導で行われるが、その後の日常的な営みが市民の間に根付かなければ政策は一過性のもので終わってしまう。NPO等に代表される市民たちは、本質的に普段から生涯学習に基づいた活動を行っている。
 そして第三に、生涯学習が、犯罪率や投票率、生活保護率、完全失業率といったコミュニティの指標、すなわち、コミュニティの質の向上に寄与するという意義である。例えば、近年、地域の有志で夕方時などに街頭見回りをするような防犯グループの活動が盛んになってきているが、そうした地域では実際、犯罪率(刑法犯認知件率)が低下するという例がみられる。こうした活動を行うにあたっても、この防犯グループの場合であれば、犯罪発生率の多い地域はどこか、時間帯はいつか、他の地域ではどんな防犯活動を行っているか等を学ぶ必要がある。その学習の積み重ねと学習の成果としての実践が、コミュニティの犯罪率の低下という成果につながっていくのである。
 このように、地域政策として地域に寄与する生涯学習政策の意義が高まっている。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
   



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