生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:平成18年1月27日
 
 

アメリカのサービス・ラーニング (あめりかのさーびす・らーにんぐ)

service learning in the United States
キーワード : コミュニティサービスシチズンシップカリキュラムセルフ=エスティーム
山田明(やまだあきら)
1.アメリカのサービス・ラーニング
   
 
 
 
  【定義】
 コミュニティのニーズを満した教科カリキュラムと連関したサービス活動を通して、児童・生徒・学生のセルフ=エスティームやシチズンシップを涵養する学びであり、事前準備(Preparation)・活動(Action)・振り返り(Reflection)・祝福(Celebration)のプロセスを含む社会貢献型の体験学習である。
【説明】
1)サービス・ラーニングの歴史
 1960年代に本格化するアメリカの社会的・経済的衰退及び文化的退廃に伴う教育の荒廃への対応は、1983年の「危機に立つ国家(A Nation at Risk)」以降の教育改革におけるシチズンシップの涵養と学力の向上への取り組みとして結実した。「規律」と「学力」を焦点化した背景には、子ども中心の進歩的教育理念や「教育の人間化」、さらには「学校の人間化」に象徴される過度の自由放任主義的な教育施策の失敗への反省があった。1980年代のコミュニティ・サービスの奨励は、サービスそのものが義務や強制になじまないとの指摘も多く、1990年代にサービスと学習を連関させたサービス・ラーニングが普及した。
2)サービス・ラーニングの学習効果
 サービス・ラーニングの学習効果については、連邦政府の機関であるCNS(Corporation for National Service)、NSLC(National Service Learning Clearinghouse)、さらには連邦政府による委託を受けているブランダイス大学( Brandeis University)等が公表している。それによると、児童・生徒・学生における学力の向上、学ぶ姿勢の向上(出席率の向上・退学の減少・暴力の減少)、セルフ=エスティームの獲得と向上、主体的な社会参加の資質及び能力の向上(例えば、リーダーシップ・コミュニケーション能力・批判的思考力・課題解決能力)、コミュニティへの関心に顕著な学習効果が認められるとしている。
【課題】
1) サービス・ラーニングにおける根本的課題
 プログラム開発や運営に関して、義務化や必修化の是非・サービス活動と教科学習の内容における乖離・教員やスタッフの役割と指導性・活動におけるリスク=マネジメントの課題が指摘されている。
2) サービス・ラーニングにおける現代的課題
 「落ちこぼれを出さない教育法(No Child Left Behind Act of 2001)」の施行による学力向上策への傾斜とそれに伴うサービス・ラーニングへの財政及び運営支援の後退が懸念されている。
3)日本におけるサービス・ラーニング普及への展望
 教育改革に関し、例えばサービス・ラーニングのような学習効果が認められている先駆的な教育方法の導入が検討される必要がある。学習指導要領において、教科学習・「総合的な学習の時間」・特別活動、さらに高校における学校特設教科及び科目・課題研究など小・中・高の各学校段階での教育活動に関しその枠組みの構築が可能である。さらに大学生についても、専門性の向上、地域づくりや社会貢献の意義の深化、サービス・ラーニングの研究センターとしての機能をも含めた実践活動が期待される。
 
 
 
  参考文献
S.H.Billig, J.Eyler, Deconstructing Service- Learning ~ Research Exploring Context, Participation, and Impacts ~, Information Age Publishing, 2003.
山田明「サービス・ラーニング理論の導入における一考察〜その学習効果と今日的課題〜」日本生涯教育学会論集24 2003年
 
 
 
 
   



『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。
<トップページへ戻る
 
       
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved.