生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:平成28年12月16日
 
 

韓国における高齢者のための生涯学習の現状と課題 (かんこくにおけるこうれいしゃのためのしょうがいがくしゅうのげんじょうとかだい)

issues and future tasks of lifelong learning for senior citizens in Republic of Korea
キーワード : 韓国高齢者平生教育生涯学習政策
金明姫(きむみょんひ)
1.高齢社会に直面した韓国を取り巻く現状と課題
   
 
 
 
  1. 韓国の高齢化
 韓国は、総人口に占める65歳以上の高齢者の割合、すなわち高齢化率が2000年に7.2%に達し高齢化社会に突入した。2015年、高齢化率は13.1%で、まもなく高齢社会が到来、2026年には20%で超高齢社会へ進み、2050年には37.4%に達すると見込まれている。特に、医療及び長期介護が最も必要とされる85歳以上の高齢者の総人口で占める割合は2010年の1.9%から2050年には14.5%へと増加する見込みである。このような急激な高齢化は、国民所得の向上と生活水準、医療サービスの改善による平均寿命の伸長と、世界最低水準の出生率によって、さらに加速している。
 高齢化に直面し、生産年齢人口の減少に伴う労働力不足の問題、高齢者扶養の社会的負担の加重化、国民の生活の質の悪化、世代間の葛藤を含む、国家の競争力の弱化などの諸課題は、今後韓国の持続的な成長を阻む脅威となるとされている。その一方で、高齢者の生活を支える主要な収入源となる私的年金を含めた公的年金はGDPの2.2%で、OECD加盟国平均の7.9%を大きく下回っており、2015年に公的年金を受給した高齢者は39.6%に留まっている。OECD(2015)によれば、韓国における65歳以上の高齢者の貧困率は49.6%で、OECD平均12.4%の4倍に該当する数値で加盟国中の第一位であった。これは、高齢者の所得の根幹となる公共部門の社会支出が、国の公的年金を十分にまかなえる規模になっていないことに起因している。こうした高齢者の経済的困窮は、高齢者が自殺を考える主因ともなっている。

2.韓国の高齢者
 現在65歳以上の高齢者は、かつて日本帝国主義と朝鮮戦争によって、学校教育の機会、とりわけ母語へのリテラシーそのものを奪われた。多くの高齢者は十分な教育を受けられず、小学校以下の教育に留まっている。そのため、地域の生涯学習センターをはじめ、福祉施設などでは、ハングル教育やレクリエーション等を中心としたプログラムが1970年代より活発に行われてきた。正規教育を受けていない無学の高齢者が1994年の65.4%から、2014年には30.5%へと半分以上減少している。中学校、高等学校卒業者は3倍以上に、短期大学以上の高等教育を受けた高齢者の割合も3倍以上増加するなど、過去20年間、高齢者の教育水準の向上は顕著である。
 しかしながら、2014年「成人文解(識字)調査」によると、18歳以上の成人の全体非識字率は依然として6.4%(約264万人)であり、そのうち70歳から79歳までは37.8%、80歳以上の非識字高齢者は63%であった。
 韓国における高齢化問題の特徴は、1)高齢者の介護施設と制度の脆弱さ、2)女性の社会参加率の低さ、3)これらが家父長的な社会の雰囲気と家族観に起因している点が他国とは異なっている。特に、女性高齢者は男性に比べこれまで十分な教育を受けてこなかったこと、貧困の程度も高く現れていることである。今後高齢者世代に合流する高学歴のベビーブーマーとの教育の格差は、所得格差はもとより、老後の生活の質をも決定していく主因となっている。生涯学習はこうした高齢者世代に生じる格差を解消し、高齢者自らがより良い老後の生計を営み、より質の高い生活を享受していくうえで最も重要な役割を担っているわけである。
 
 
 
  参考文献
・金明姫「近年の韓国における高齢者のための生涯学習の現状と課題」日本生涯教育学会論集37、2016年
 
 
 
 
   



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